3つの素粒子からなる、この世界 天才たちの英知を持ってしても簡単には説明がつかないSFの世界へようこそ!

解説

力を伝える粒子、物質を作る粒子、モノに質量を与える粒子―世界を構成する素粒子は3種類ある。1行目は、力を伝える粒子がどう振る舞うかを記述する。2行目は、力を伝える粒子と物質を作る粒子の相互作用を記述する。もしもこの世にこの一行がなかったら、物質に力が伝わらず、我々は動くことさえできない。3行目は、モノに質量を与える粒子と物質の相互作用を記述する。もしもこの世にこの一行がなかったら、我々の質量はゼロになる。ダイエットの必要もないだろう。4行目は、モノに質量を与える粒子の振る舞いを記述する項。この一行が記述する「自発的対称性の破れ」という現象によって、はじめてモノに質量が生まれるのだ。たった4行ながら、この式には1900年代の量子力学の黎明から2000年代のヒッグス粒子の発見による標準模型の完成という現代物理の歴史が詰まっている。そこには幾多のノーベル賞と数多くの科学者の発見が詰まっているのだ。

上の式は様々な現象を説明できるが、宇宙にはこれだけでは解決できない謎も多数存在する。最先端の科学とSFの想像力が交わった先に何が起こるか、9つの可能性から考えてみよう。

  • 第1章 ビーム

    会議で使われるレーザーポインターも「ビーム」の一種。その正体は、方向を揃えて打ち出された光や粒子の集まり。DVDの読み込みや、がん細胞を破壊する医療にも使われる。ロケットに遠隔で電気を送るマイクロ波ビーム、狙いを定めて音を届ける超音波ビーム、物体を見えなくする闇のビームなど、ふしぎなビームの研究もある。

  • 第2章 エントロピーの増大

    熱いお茶に冷たい水を注ぐと、ぬるくなる。でも逆に、ぬるいお茶が熱いお茶と冷たい水に自然に分離することはあり得ない。この法則に基づいて宇宙のエントロピー(≒乱雑さ)が増え続けると、世界はあらゆるものが交じり合った均一な状態「熱的死」に至ってしまうかもしれない。宇宙の終焉には議論の余地があるが、いつかは別の宇宙に逃げる必要があるだろう。

  • 第3章 テラフォーミング

    彗星をぶつけて海を作る、衛星軌道に鏡を設置して日射量を調整する、隕石をぶつけて惑星の軌道を変える、地球から生物を持ち込んで生態系を変化させる。そんなあらゆる方法で星の環境を地球化する「テラフォーミング」。大がかりな改造は今の技術では難しいが、地球が危機に陥る可能性は常にあるため、発展が待たれる分野である。

  • 第4章 パラレルワールド

    サイコロを振ったとき、1から6それぞれの目が出た宇宙が別々に生まれる。これは量子力学における、様々な可能性が観測で1つに収束する現象が現実を形作るという考えから来る仮説の一つだ。我々の宇宙と物理法則の異なる無数の宇宙(=マルチバース)が存在するという予想もある。あなたももう既に、別の宇宙に迷い込んでいるのかもしれない。

  • 第5章 テレポーテーション

    瞬間的に遠くの場所に移動できたら、どんなに便利な事だろう。量子テレポーテーションという手法では、離れた場所に一瞬で量子の状態を転送することが可能である。もつれあった2つの粒子の片方の状態が観測されると、もう片方の状態が瞬間的に決定するという性質を用いたこの手法。情報を瞬時に送ることができるであろう、期待の技術である。

  • 第6章 不老不死

    自然界には、老化しない上にガン耐性を持つハダカデバネズミ、どこを切っても再生するプラナリア、真空状態でも死なないクマムシなど、様々な最強生物が存在する。このような研究で人類が不老不死に近づいていったら、どうなるか。人類は地球外に移住しない限り、人口爆発を起こす。不老不死は、人類の絶滅を意味するのだ。

  • 第7章 タイムマシン

    過去に行くことは難しい。宇宙空間にできる穴「ワームホール」でタイムトラベルが可能だと推測する者もいるが、現実的な可能性は現状ほとんどない。一方、未来に行くことは可能である。光速に近い速さで移動したり、重力で歪んだ空間に身を置くことで生まれる時間のズレ「ウラシマ効果」があるからだ。これはカーナビのGPS衛星からの情報補正にも使われている。

  • 第8章 ブラックホール

    光さえも逃れられない天体。自分の重力で潰れた星のなれのはて。ブラックホールが初めて撮影できたというニュースも記憶に新しい。強い重力は時間さえ歪ませ、ブラックホールに落ちると、落ちる人にとっては一瞬でも、外から見ると永遠にも等しい時間落ち続ける。極小ブラックホールの生成も試みられており、エネルギー源として利用する可能性も考察されている。

  • 第9章 地球外生命

    知的生命体のいる確率を計算したり、宇宙でチリを集めて微生物がいるか調べたり、宇宙から届く電波を解析したり、地球外生命についての研究は数多くなされている。進んだ文明は星をカラで覆って熱や光を利用するかもしれず、そこから漏れる赤外線を探すアイデアもある。地球生命自体、隕石に付着して地球に来た可能性もあり、生命のルーツは未だ謎に包まれている。

監修者プロフィール

宮本道人 MIYAMOTO Dohjin

1989年東京生まれ。科学文化作家。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。筑波大学システム情報系研究員、変人類学研究所スーパーバイザー、株式会社ゼロアイデア代表取締役。開かれた科学文化を作るべく研究・評論・創作。舞台・漫画にも協力。編著『プレイヤーはどこへ行くのか』、協力『シナリオのためのSF事典』など。現代思想2019年8月号に共著小説「呑み込まれた物語」掲載、日本バーチャルリアリティ学会誌で対談「VRメディア評論」連載、ユリイカ・週刊読書人などに寄稿。

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