本記事は2022年5月12日にvolkswagen.comに掲載された記事の日本語版です。
インテリジェントな都市計画のパイロットプロジェクト：米国インディアナ州カーメル市では、フォルクスワーゲンが交通の流れを理解するためにモビリティデータを分析しています。フォルクスワーゲンは、このプロジェクトのために、製造部門で使用している自社開発のソフトウェア「Computer Vision（コンピューター ビジョン）」を活用しています。
都市部の人口増加傾向が顕著になっています。現在、40億人以上の人々が都市部に住んでいます。これは世界人口の半分以上です。このような人口密度の増加に対応するには、インテリジェントな都市計画が必要です。「今日の世界では、ソフトウェアがこれを実現する唯一の方法です」と、フォルクスワーゲン グループ「Smart.Production:Lab」技術責任者のマルクス ツァーボックは説明しています。彼の開発チームは現在、自動車製造用のインテリジェント ロボティクスとソフトウェアに取り組んでおり、その成果として、「Volkswagen Vision Workbench（フォルクスワーゲン ビジョン ワークベンチ）」（VW²）などの製品が開発されています。これは、画像を認識して処理するソフトウェアです。「もともと、VW²は生産と物流における視覚的な品質管理のために開発されました」と、ツァーボックは語っています。「これにより、工場の従業員は、資材がすべて揃っていることや、ラベルが正しく貼られていることをすばやく確認することができます。それによって、仕事が楽になり、時間も節約できます」
ニコラス ホゥッメル、ロルフ ゼィーモン、マルクス ツァーボック（左から右）は「Smart.Production:Lab」の一員であり、フォルクスワーゲンのソフトウェア「Computer Vision」を使用してインテリジェントな都市計画に参画することに期待で胸を膨らませています。
発明者として、私たちは常に好奇心を持ち、さらに先へ進むことができるかどうか自問しています。
この研究部門は、フォルクスワーゲンのソフトウェア イノベーション センターの一部であり、新しいITソリューションとイノベーションに関するグループの専門知識のハブとして機能しています。「発明者として、私たちは常に好奇心を持ち、さらに先へ進むことができるかどうか自問しています」と、ツァーボックは説明します。そして、VW2はさらに先へ進みます。米国のカーメル市との研究プロジェクトでは、フォルクスワーゲンとスカニアの研究者がこのソフトウェアを使用して交通の流れを分析しています。簡単に言えば、このソフトウェアは、カメラを使用して市内の交通の流れを記録し、大規模なデータベースを作成します。このデータは、人工知能（AI）によって分析され、輸送インフラの最適化に貢献します。
人工知能 – それほど難しいことではありません
物流から都市へ：スマートシティ向けのスマート ソフトウェア。
「他の多くの都市と同様に、カーメル市には公共エリアにカメラのネットワークが設置されています」と、ツァーボックは言います。「とりわけ、それらは交通の流れを記録し、これまでは主にセキュリティ目的で使用されてきました。今後は、データ分析による交通計画のための情報も生成されます」 交通局の担当者は、自動車、自転車、歩行者などの交通対象をカウントすることで、道路の使用パターンを分析し、交通の流れを最適化し、緊急時の手続きをサポートするための情報を得ることができます。さらに、駐車スペース、バスの停留所が必要な場所や、ピーク時に交通の流れを変えることで状況を改善できる場所を特定することができます。
しかし、このソフトウェアを工場ではなく都市環境で使用することにより、いくつかの課題にも直面しました。「工場は非常に管理された環境のため、そこで何が起こるかを予測するのは簡単です。しかし、交通に関しては、たとえばアライグマが道路を横切ることもあります。私たちのアルゴリズムは、そのようにプログラムされていませんでした」と、ツァーボックは回想しています。そのため、チームはアライグマの画像を検索し、AIに認識させました。これにより、市は野生動物が頻繁に道路を横断しているエリアを特定し、将来的には、近隣エリアに入る車両に、ほぼリアルタイムで動物の目撃情報を伝えることができるようになります。
ラウンドアバウト式交差点の街として知られているカーメル市では、ソフトウェア「Computer Vision」がカメラを使用して、都市計画を作成するための貴重なデータを収集しています。
「ソフトウェア開発は反復プロセスです。つまり、アルゴリズムを継続的に改善し、アルゴリズムをその限界まで到達させたいと考えています」と、ツァーボックは言います。カーメル市には、そのために最適な条件が揃っています。「ここには、四季があります。つまり、カメラは、明るい日差し、霜、霧、雪に対応する必要があります」
交通状況は、10秒ごとに追跡されます。これは、大きな事故など、異常な交通状況が発生した場合に特に役立ちます。
カーメル市には、素晴しい革新の歴史があります。ここは、1924年に米国で最初の電気式信号機が設置された場所であり、現在、この都市には140を超えるラウンドアバウトがあります。これは、米国の他のどの都市よりも多い数です。カーメル市の人口は10万人強で、30年前の4倍です。この人口の急増は、新しい都市計画の必要性をもたらしました。
Volkswagen Newsroom
フォルクスワーゲンの開発者は、グラフィックスとマップを使用して、集約された交通量を表示するダッシュボードを市に提供しています。その際、匿名化は非常に重要です。「車両の生産で使用する場合でも、人物に自動的にモザイクがかかるようにシステムを開発しました」と、ツァーボックは説明しています。「現在、このシステムを街で使うために、ナンバープレートにモザイクがかけられています。」さらに、映像は保存されず、計算した情報のみが保存されます。
カーメル市長のジム ブレイナードがフォルクスワーゲンとの協力を歓迎するもう1つの理由は、彼が新しい公共交通機関を導入したいと熱望しているからです。「そのためにはデータが必要です。そして、そのデータは、フォルクスワーゲンとのプロジェクトで得られたものです」と、26年間にわたって市長を務めているブレイナードは述べています。
クルマ、人、モノの詳細な移動パターンを把握することにより、都市と住民のニーズに合わせて、新しいコンセプトを最適化することができます。危険区域に関する情報も、事故のリスクを軽減します。
このビデオでは、「Volkswagen Vision Workbench」（VW²）がどのように機能するかを明確に説明しています。
このデータから、都市計画の担当者に加えて、警察や消防も恩恵を得ることができます。データは10秒ごとに更新されるため、交通状況はほぼリアルタイムで表示されます。「これは、大規模な事故や緊急事態の発生など、特定の交通状況で特に役立ちます」と、ツァーボックはコメントしています。これにより、近くを走行中のドライバーは、異常な渋滞、突然現れた人々の集団、交通事故などが発生したときに、より迅速に対応することができます。
開発者は、すでに一歩先を考えています。「私たちは、カメラを最適に使用できるテスト環境を拡大して、より多くの道路にこのテクノロジーを設置したいと考えています」と、ツァーボックは言います。これにより、都市全体の交通モデルでデータを利用できるようになります。測定対象の例としては、自転車や電気自動車が好んで利用するルートや、需要に応じた方法で自転車専用道路や充電インフラを拡張することが含まれます。
「そのためには、カメラがさまざまな種類の車両を識別できる必要があります」と、ツァーボックは説明しています。「私たちは、すでにこの作業に取り組んでいます。」しかし、これだけではありません。このプロジェクトは、フォルクスワーゲンにとって世界初のプロジェクトですが、これはほんの始まりにすぎません。「長期的には、当社のソフトウェアは世界中のさまざまな複合輸送ソリューションで使用される可能性があります」と、この開発者は説明しています。他の都市との協議は、すでに進行中です。
