本記事は2022年2月10日にvolkswagen.comに掲載された記事の日本語版です。
皆さんは、友人、職場の同僚、家族と電気自動車が本当に未来のクルマなのか話したことはあるでしょうか。水素や合成燃料は、より良い選択肢なのではないでしょうか?多くの科学者は、この問題はすでに解決済みだと考えています。「多くの研究では、電気駆動が自動車に動力を供給するためのもっとも効率的な方法であることが示されています。」と、カールスルーエ工科大学(KIT)のバッテリー専門家であるProf. マクシミリアン フィヒトナーは述べています。クルマに関する議論で知っておく必要があるすべての内容を5つのトピックをまとめました。
「多くの研究により電気駆動が自動車に動力を供給するもっとも効率的な方法であることが示されています。」
すべての駆動方式の中で、電気モーターがエネルギーを最大限に活用できることが証明されました。「生成されたエネルギーの70%がホイールに伝達されます。」と、KITの専門家であるフィヒトナーは説明しています。水素(15~18%)、e-fuel(合成燃料)(5~8%)、現代の内燃エンジン(20~24%)は、効率が大幅に低下します。電気自動車は、単純な原理で作動することにより、効率が向上します。たとえば、風力発電所によって生成された電力は、バッテリーに蓄えられ、必要に応じて電気モーターを介してホイールへと伝達されます。その一方で、水素は、クルマに搭載された燃料電池で利用される前に、複雑な製造工程、輸送、変換プロセスを経る必要があるので、エネルギーを大幅に失います。
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6リットルの「e-Diesel」を生成するには、162キロワット時(kWh)の電力が必要になり、クルマは約100kmしか走れませんが、電気自動車は、同じ量のエネルギーを使って、約1,000km走ることができます。
「e-fuel」として知られる合成燃料では、エネルギーの損失はさらに大きくなります。わずか1リットルの「e-Diesel」を生成するのに27キロワット時(kWh)の電力が必要です。平均燃費は6リットル/100kmのため、100km走行するためには162kWhの電力が必要です。「それだけのエネルギーがあれば、電気自動車を1,000km走らせることができます。」と、フィヒトナーは説明しています。
電気自動車には、日常で不便のない航続距離をすでに実現しています。「ID.3(アイディ.3)」1がその一例です。このコンパクトなフォルクスワーゲン モデルは、45kWhのバッテリーでは、1回の充電で最大352kmの航続距離を実現します。さらに、容量77kWhのバッテリーでは最大549km走行可能で、58kWhのバッテリーでは最大426kmを走行可能です(いずれの数値もWLTPに基づく)。
専門家によると、蓄電ユニットの改良やバッテリーのセットアップなどの技術的進歩により、航続距離は大幅に伸びています。「1,000kmの航続距離も夢ではありません。」と、フィヒトナーは述べています。フォルクスワーゲンは、より長い航続距離とより短い充電時間を目標に、 パートナーの「QuantumScape」と協力して、全固体電池の開発にも取り組んでいます。
フォルクスワーゲン「ID.3」をはじめとする電気自動車は、すでに日常生活で使用されています。マクシミリアン フィヒトナーなどの専門家は、さらなる改善を予測しています。
数多くの研究によると、バッテリー駆動式電気自動車は、すべての自動車の中で最も気候変動対策に貢献しています。この事実は、2020年に3つの有名な研究機関によって共同で発表されました: グローバル コモンズと気候変動に関するメルカトル研究所(MCC)、ポツダム気候影響研究所(PIK)、パウル シェラー研究所(PSI)です。
重要なポイント:電気自動車の気候変動対策におけるメリットは、近年大幅に拡大しています。これは、バッテリー生産の進歩、バッテリーの長寿命化、ヨーロッパにおける再生可能エネルギーの割合増加の結果です。「内燃エンジンと比較して、電気自動車の製造には依然としてより多くのエネルギーが必要です。しかし、クリーンな電力が使用されれば、それは数万キロメートル走行後に相殺されます」と、PSIの研究科学者であるクリスティアン バウアーは述べています。
ヨーロッパで発売されているコンパクトクラスのクルマでは、CO2排出量の面において、電気自動車は、ディーゼル車やガソリン車よりも優れていることが示されています。
電気自動車は、地域の環境汚染を回避または削減ができるため、「e-fuel」の一歩先をいっています。これは、すすやNOxの排出、騒音についても同様です。
田園地帯を静かに走りたい。フォルクスワーゲン「ID.4」なら問題ありません。
一例として「ID.4(アイディ.4)」2を取り上げてみましょう。このフォルクスワーゲンの電動SUVは、洗練された空力音響性能により、非常に静かなドライブを実現します。これは、ドアミラーの形状やシャシーの入念な防音対策など、細部に渡る取り組みによるものです。また、風切り音や、駆動システム、シャシー、タイヤが発する構造的ノイズを低減することによって、電気自動車はほとんど騒音を発生しません。
水素やその他の「e-fuel」とは異なり、電気自動車への完全なシフトはドイツの輸送産業のエネルギー需要を大幅に削減します。その理由は、電気駆動のエネルギー効率が高いからです(項目1を参照)。専門家のフィヒトナーは、4,800万台の乗用車がすべて電気自動車に置き換えられた場合、2018年の数値と比較して輸送産業では75%以上のエネルギーが節約されると推定しています。一方、水素自動車へ完全にシフトした場合は、輸送業界のエネルギー需要を約3分の1増加させます。言い換えれば電気自動車は、風力発電や太陽光発電から生成される気候に優しいエネルギーを少ない量しか必要としないため、クリーンエネルギーへのシフトを促進します。
e-モビリティの課題は、充電施設の拡充や、持続可能なサプライチェーンを利用したリチウムやコバルトなどのバッテリー原材料の調達です。フォルクスワーゲンは、これらの両方の分野でパートナーと協力しています。
フォルクスワーゲン グループは、2021年の初頭に新しい原材料管理システムを導入しました。このシステムでは、リチウム、コバルト、ニッケル、グラファイトといったバッテリーに必要な原材料を含む、特にリスクの高い16の材料の採掘と処理に関する普遍的な持続可能性基準を設定しています。その目的は、たとえば認定監査やブロックチェーン技術の使用を通じて、サプライチェーン全体の透明性を高めることです。関連するすべての直接的なビジネス パートナーは、2019年以降、持続可能性評価を受ける必要があります。環境基準と社会基準は、コストや品質などの基準と同等です。
「地域発展のためのコバルト」イニシアチブ:コンゴ民主共和国でのプロジェクトは、ドイツの国際協力協会である「GIZ」によって実施され、複数の企業が資金提供しています。その目的は、コバルトを採掘するための持続可能な方法を開発し、教育の機会と収入源の確保を促進することです。
「地域発展のためのコバルト」イニシアチブにおいて、フォルクスワーゲンは、他の企業と協力して、コンゴ民主共和国の小規模採掘現場の環境を改善するキャンペーンを行っています。このパイロットプロジェクトは、周辺地域の人々の健康と安全、および生活環境を改善することを目的としています。また、パートナーと協力して、フォルクスワーゲン グループは、チリのアタカマ塩原でリチウムを含む天然資源の責任ある取り扱いを提唱する「責任あるリチウム パートナーシップ」を開始しました。
フォルクスワーゲンは、パートナーと協力して、2025年までにヨーロッパで約1万8,000か所の公共急速充電ステーションを運営することを目指しています。これにより、急速充電ネットワークの数が5倍に増加し、2025年にヨーロッパで予測される総需要の約3分の1を提供します。
フォルクスワーゲンはまた、北米と中国で公共急速充電ネットワークを拡大しています。「Electrify America」は、2025年末までに米国とカナダで約1万か所の急速充電ステーションを設置することを計画しています。中国では、フォルクスワーゲンが2025年までに合弁会社の「CAMS」を通じて合計1万7,000か所の急速充電ステーションを設置することを目指しています。
同社はすでに、ドイツではフォルクスワーゲン子会社の「Elli」を通じて、自宅で充電するための充電器を販売しています。この製品には、再生可能エネルギーに基づくフォルクスワーゲン グリーン エネルギーも含まれています。