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それはすべて新しいアイデアに関するものですコーヒーから作られたヴィーガンレザー

2022/10/25

それはすべて新しいアイデアに関するものですコーヒーから作られたヴィーガンレザー

2022/10/25

本記事は2021年9月10日にvolkswagen.comに掲載された記事の日本語版です。

持続可能なイノベーションと地域のパートナー:フォルクスワーゲン グループ イノベーションは、車両のインテリアに使用する次世代のエコロジー素材の開発に取り組んでいます。革新的なヴィーガンレザー(アニマルフリーの皮革)の原料は、ブラウンシュヴァイクを拠点とするコーヒー焙煎会社の「Heimbs(ハイムブス)」から提供されています。

レザー(本革)はクルマのインテリアの代表的な素材です。これまでは、シートカバーやステアリングホイール、アームレスト、装飾パネルなどに使用されていました。しかし、電気自動車の「ID.(アイディ.)」ファミリーを設計する際、フォルクスワーゲンは、可能な限りアニマルフリーの素材を使用することにしました。同時に、車両のライフサイクル全体を持続可能なものにするために、すべての素材と部品のカーボンフットプリントを最適化しています。この総合的なアプローチは、すべての部品の原材料から始まり、車両部品のリサイクルに至るまで、車両のライフサイクル全体に及んでいます。

短期的には、人工皮革の割合を増やすことを可能にする様々な素材を検討しています。
Dr. マルティナ ゴットシュリング
フォルクスワーゲン グループ イノベーション研究者

アニマルフリーの素材を使用するという基本的な決定と、アニマルフリーの製品に対する顧客の需要の増加により、「ID.」モデルでは、従来のレザーは使用していません。試行錯誤を繰り返した結果、レザーの代替品として採用されたのが、イミテーションレザーです。このイミテーションレザーは、見た目も手触りもレザーのようで、手入れも簡単で、耐久性もあり、米国や中国をはじめとする数多くの市場で大きな需要があります。

フォルクスワーゲンは、アニマルフリーの素材を使用することにより、車両インテリアの環境への影響を大幅に改善するという目標を設定しました。その1つの方法は、ポリウレタンやPVCといった鉱油を含むプラスチックから作られることの多い人工皮革に対してオーガニック素材の割合を増やすことです。

コーヒーレザー:地域密着型で持続可能

イミテーションレザーは、裏面の織布層、樹脂層、表面層から構成される多層素材です。「私たちは、短期間でイミテーションレザーにおけるオーガニック素材の割合を増やすために様々な素材に注目しています。そのための明確なスタート地点は、樹脂層の素材です」と、Dr. マルティナ ゴットシュリングは説明しています。彼女は科学者として持続可能な素材を研究しています。オーガニック素材を研究しているチームと様々な可能性を探った結果、コーヒーレザーというアイデアが生み出されました。

フォルクスワーゲン グループ イノベーション研究者のDr. マルティナ ゴットシュリングは、自身のチームで「コーヒーレザー」のアイデアを開発しています。

コーヒー豆を焙煎すると、シルバースキンと呼ばれる種子表面の薄皮が副産物として残ります。この素材を提供できるパートナーは、すぐに見つかりました。ブラウンシュヴァイクに本拠を置くコーヒー焙煎会社「Heimbs」は、高品質なコーヒーとエスプレッソ製品を専門としており、主にケータリング業界とホテル業界にコーヒーを販売しています。1880年にブラウンシュヴァイクで設立された「Heimbs」は、1954年以来、ウォルフスブルグという自動車の町より南約40kmにあるリングゲビート地区の北部で生産を続けています。生産工場の下のフロアには、茶色い麻袋に入れられた高品質なコーヒーの生豆が保管されています。「Heimbs」が現在、生豆を保管するために使用している貯蔵室の壁は数メートルの厚さがあり、戦争中も無傷のままでした。空気中にはわずかに酸性の草のような匂いが漂います。おなじみのコーヒーの香りは、焙煎によるものです。

オペレーション マネージャーのラルフ シュヴァルツェンベルクは、「Heimbs」が1954年に独自で開発した焙煎機械を今でも使っていることを誇りに思っています。

「Heimbs」は、特許取得済みの空気熱焙煎方法を使用するドイツで唯一の焙煎業者です。プロダクション マネージャーのラルフ シュヴァルツェンベルクは、そのプロセスを次のように説明します。コーヒー豆はエアポケットに載せられ、熱で温められた気流で間接的に約260℃で焙煎されます。プロセス中に、加熱した金属部品と接触することはありません。他の焙煎方法では、これが原因でコーヒー豆が燃えて、風味が損なわれることがよくあります。

「Heimbs」は、1954年に独自で開発した機械で焙煎しています。1988年には冷却装置が追加され、焙煎を始終管理することができるようになりました。この本格的なマヌファクチュアは、1986年にヨーロッパ有数のコーヒー会社、「Dallmayr Kaffee OHG」の傘下に入りました。しかし、その製造及び焙煎方法は、今でも変わっていません。

焙煎中、シルバースキンはコーヒー豆から剥離し、副産物として蓄積し、一日の終わりに袋詰めされます。乾燥したシルバースキンは通常、焼却または堆肥化され、ごく一部がスティック肥料になります。

シルバースキンにはカフェインが含まれているため、家畜の飼料には適していません。また、シルバースキンを使ってバイオガスを生産する試みも成功しませんでした。

現段階では検証は順調

コーヒーのシルバースキンは、イミテーションレザーの樹脂素材として非常に適しています:「この素材はすでに乾燥しており、次の加工処理に非常に効率的な状態になっています。なぜなら、湿った材料だと、最初に多くのエネルギーを使用して乾燥させる必要があるからです」と、Dr. マルティナ ゴットシュリングは述べています。彼女は素材の持続可能性にも魅力を感じています。「この素材の素晴らしい点は、副産物ということで、他の用途に使用されていないことです」

現在、フォルクスワーゲンはサプライヤーと協力して、樹脂素材としてコーヒーのシルバースキンを使用したイミテーションレザーが、フォルクスワーゲンが車両生産で使用する素材に対して設定した厳しい品質基準を満たしているかどうかを検証しています。この品質基準では、イミテーションレザーが何年にもわたってドライバーの着座による負荷に耐え、視覚的および触覚的品質を維持する必要があります。マルティナ ゴットシュリングは、最初の検証結果に満足しています。「これまでのテストでは、コーヒーレザーの耐久性は、市場で高い評価を得ている他のイミテーションレザーと同等のレベルに達しています」と説明しています。これまでにテストを実施したイミテーションレザーのサンプルには、50%を超えるオーガニック素材が含まれています。これは、「素晴らしい値」であるとゴットシュリングは述べています。オーガニック素材には、コーヒーの副産物を含む樹脂素材と、再生可能な原材料からすでに作られている織布の裏地が含まれます。

Shaping Mobility Podcast
#07 Autonomous driving: the future of mobility?
「これまでのテストでは、コーヒーレザーの耐久性は、市場で高い評価を得ているイミテーションレザーと同等のレベルに達しています」
Dr. マルティナ ゴットシュリング、フォルクスワーゲン グループ イノベーション研究者

わずか数年で大量生産できる可能性

コーヒーのシルバースキンを使用したイミテーションレザー素材のテストを完了したフォルクスワーゲン グループ イノベーションの次の目標は、この素材の大量生産です。これには、例えば、優れた触り心地や表面のシボ、大量生産に合わせた供給体制の整備などが挙げられます。「この素材の可能性は大きく、“ID.(アイディ.)”電気自動車の環境への配慮をさらに最適化するための次のステップに繋がるかもしれません」と、マルティナ ゴットシュリングは述べています。「Heimbs」は、有名ではあるものの、小規模な地域のコーヒー焙煎業者として、フォルクスワーゲンのような世界的な自動車メーカーが必要とする量を提供することができるのでしょうか?ゴットシュリングは「必要な量はそれほど多くないので、問題ありません」と説明しています。主にホテルやケータリング業界に製品を出荷しているこのコーヒー焙煎業者は、コロナウイルス パンデミックの間、その生産能力を十分に活用できませんでした。「“Heimbs”に蓄積されたシルバースキンの量で、私たちは、長期間にわたって製品を製造することができます」。試作品はわずか2年で開発され、オーガニック素材の割合が高いアニマルフリーのヴィーガンレザーを、車両のシートやアームレストに採用することができました。

コーヒーのシルバースキンからオーガニック素材を多く含んだ非動物性レザー代替品を製作するフォルクスワーゲンの研究は、ドイツ放送局のZDFで取り上げられ、「Plan B」TVプログラムで番組が制作されました。「持続可能なレザー」について話し合ったこの番組は、秋に放映される予定です。

植物性のレザー代替品:

コーヒー、サボテン、リンゴから作られたレザー


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